Eneleaks連載 新シリーズ
「再生可能エネルギーが気になるノベル」

今までにEneleaksに掲載してきた再生可能エネルギーの話を、ライトノベルでお届けします。

 


前回までのストーリー 「再生可能ノベル2 柴崎町4丁目の日常-2」

 

 

しかしひなたは郁実の動揺に気付かずに、腕に抱き付いたまま黒の正体を確認した。黒の上に、眼鏡をかけた金髪の頭が乗っていた。
「ルレイ神父じゃない。黒いからフォッシルズかと思った」
 僧衣の裾が揺れているので、フォッシルズではない。フォッシルズは風や日差しの影響を受けない。
 ルレイ神父は屋根に穴を開けない太陽光パネル設置工法、シンプル・レイの伝道師である。再生可能エネルギーに帰依しているので、ひなたの姿が見えるのだ。
「こんばんは、ひなたさん。郁実さんは……私の声が聞こえマスカ?」
 ルレイ神父に向き合うためにひなたがようやく離れてくれた。郁実はなんとか頷いたが、ぎくしゃくしている。まだ腕にぬくもりと柔らかさが残っている。
 ひなたと出会って一月以上経っても、手を握られるだけで、こんな現実が自分に起こるはずがないと思ってしまう。
「ビーエムエス?」
 ひなたが首を傾げ
「Battery Management Systemのことデス」
「バッテリーを、マネジメント、つまり管理するシステム?」
 郁実はルレイ神父の言葉を反芻し、OrganicBerry Piに繋げたモバイルバッテリーを見たが、薄いバッテリーの仕組みは意識したことがない。
「ひなたさんも知らないの?」
「太陽光発電のことならわかるけど……」
 ルレイ神父が空になったバッテリーをOrganicBerry Piから外して両手に包んだ。
「この中には、もう電気がないとお思いですか?」
「だから止まったんですよね」
「そうとは限らないのデス。OrganicBerry Piが取り出せる電圧を下回ってしまっただけで、まだ残っている可能性があります。容量が減ると電圧が下がるのです
残ってたって、OrganicBerry Piでは使えないってことでしょ? せっかく充電したのに」
 むうーとひなたが唇を尖らせる。なんとか取り出せないものかとモバイルバッテリーを振ったり押したり叩いたりしてみる。
「いけません!」
 ルレイ神父が手を伸ばして止めた。
「バッテリーから業火が放たれ、辺りを燃やし尽くしてしまいます……!」
 険しい顔をひなたにぐいっと近づける。
 
 
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