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 2021年10月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)がGHG(GreenHouse Gas)、つまり温室効果ガスの情報開示対象を「スコープ3」にまで広げるという報道がありました。 「スコープ3」とは、原材料の調達や販売後の製品の使用など、事業のバリューチェーン全体(海外含む)から排出される量を指します。 

 これまでGAFAのようなグローバルの巨大テック企業が先導してきたように、また日本においては自動車産業界などに見られる動きとして、自社だけに留まらず取引先企業を含むサプライチェーン全体に対して脱炭素化をはかる動きが、今後さらに拡大していくことが予想されます。 それは下請け業者からすれば、カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること)が取引条件になることを指します。脱炭素対策は多くの企業にとっての死活問題になりかねません。

期待される再エネ価値取引市場

手っ取り早い解決方法は、下記の二つです。

  1. 電力会社との契約を「再エネ電力プラン」に切り替える
  2. 何らかの「環境クレジット」を購入する

いずれも再エネの発電設備を自ら導入するのではなく、その手間や時間をまずはお金で買う手段です。 特に2点目の「環境クレジット」については、21年11月から「再エネ価値取引市場」がオープンとなり、新たな関心を集めています。これまでは小売電気事業者しか参加できなかった「非化石価値」の市場取引に、需要家も参加が可能となります。

 前経産省大臣の梶山弘志氏から、21年5月の記者会見で「現在の価値の1/10程度で取引できるよう制度を整える」というような旨のコメントがありました。もしこれが実現すれば、非化石証書は再エネ価値取引市場の前身である「非化石価値取引市場」で入札最低価格の1.3円/kWhで多く取引されていることから、0.1円/kWh程度になるのではという憶測も生まれます。

 電力会社の販売する再エネ電力プランは、通常の電力料金単価よりもプラス2〜4円程度に価格設定がされていますので、企業の環境・CSR担当者からすると関心が高まるのも無理はありません。

 ただ私は、再エネ価値取引市場の開設はあくまでも一種の延命措置にすぎず、長期的には再エネの新規導入に力を注がなければ、日本全体として脱炭素社会を生き抜いていけないのではないかと考えています。

FIT証書はパイの取り合い

 まず、「再エネ取引市場」で取引対象となるのは、非化石価値のうちFIT証書、つまり固定価格買取制度(FIT)のもとに設置されてきた再エネ発電由来の環境価値です。

 これまでの「非化石価値取引市場」では、FIT証書は小売電気事業所によりまず入札で取引され、取引されずに余ったFIT証書は小売電気事業者に無償で配られてきました。これにより、小売電気事業者の電力調達にかかるCO2排出係数が押し下げられ、この結果、需要家に広く環境価値の還元が行なわれるという図式になっていました。

 無償で配られているくらいですから、新しい市場である再エネ価値取引市場でも、例えば0.1円という取引はある意味問題ない。むしろよいとさえ思えます。しかし、これが実現するかどうか、また、そういった状態が継続するかどうか、それこそ需要と供給の関係で決定する見えざる手に委ねられる世界の話です。 現在のFIT証書の取引量は980億kWhで、日本全体の販売電力量の1/8を占めていますので、供給量も当面は十分に見えます。

 しかし、今後はというと、その供給量が飛躍的に増えることは期待できないと思っています。

 これまでのFIT制度のもとでは、しばらくメガソーラーの建設が進み、山林を切り崩す等の開発行為が社会問題になったくらいでしたが、今や、それに適した場所を探すことは容易ではありません。

 つまり、FIT証書については、どうしても今ある決まった量のパイを取り合う構図になってしまうのです。需要が高まれば、将来的に取引価格が上昇する可能性は、十分あり得る事態です。

https://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/image/upload/h_681,w_1024/v1636938674/1892572_m1_otmr4f.jpghttps://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/image/upload/c_crop,h_1276,w_1276,x_322,y_0/h_150,w_150/v1636938674/1892572_m1_otmr4f.jpgaltenergy法人再エネ価値取引市場,産業用太陽光発電 2021年10月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)がGHG(GreenHouse Gas)、つまり温室効果ガスの情報開示対象を「スコープ3」にまで広げるという報道がありました。 「スコープ3」とは、原材料の調達や販売後の製品の使用など、事業のバリューチェーン全体(海外含む)から排出される量を指します。   これまでGAFAのようなグローバルの巨大テック企業が先導してきたように、また日本においては自動車産業界などに見られる動きとして、自社だけに留まらず取引先企業を含むサプライチェーン全体に対して脱炭素化をはかる動きが、今後さらに拡大していくことが予想されます。 それは下請け業者からすれば、カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること)が取引条件になることを指します。脱炭素対策は多くの企業にとっての死活問題になりかねません。 期待される再エネ価値取引市場 手っ取り早い解決方法は、下記の二つです。 電力会社との契約を「再エネ電力プラン」に切り替える何らかの「環境クレジット」を購入する いずれも再エネの発電設備を自ら導入するのではなく、その手間や時間をまずはお金で買う手段です。 特に2点目の「環境クレジット」については、21年11月から「再エネ価値取引市場」がオープンとなり、新たな関心を集めています。これまでは小売電気事業者しか参加できなかった「非化石価値」の市場取引に、需要家も参加が可能となります。  前経産省大臣の梶山弘志氏から、21年5月の記者会見で「現在の価値の1/10程度で取引できるよう制度を整える」というような旨のコメントがありました。もしこれが実現すれば、非化石証書は再エネ価値取引市場の前身である「非化石価値取引市場」で入札最低価格の1.3円/kWhで多く取引されていることから、0.1円/kWh程度になるのではという憶測も生まれます。  電力会社の販売する再エネ電力プランは、通常の電力料金単価よりもプラス2〜4円程度に価格設定がされていますので、企業の環境・CSR担当者からすると関心が高まるのも無理はありません。  ただ私は、再エネ価値取引市場の開設はあくまでも一種の延命措置にすぎず、長期的には再エネの新規導入に力を注がなければ、日本全体として脱炭素社会を生き抜いていけないのではないかと考えています。 FIT証書はパイの取り合い  まず、「再エネ取引市場」で取引対象となるのは、非化石価値のうちFIT証書、つまり固定価格買取制度(FIT)のもとに設置されてきた再エネ発電由来の環境価値です。  これまでの「非化石価値取引市場」では、FIT証書は小売電気事業所によりまず入札で取引され、取引されずに余ったFIT証書は小売電気事業者に無償で配られてきました。これにより、小売電気事業者の電力調達にかかるCO2排出係数が押し下げられ、この結果、需要家に広く環境価値の還元が行なわれるという図式になっていました。  無償で配られているくらいですから、新しい市場である再エネ価値取引市場でも、例えば0.1円という取引はある意味問題ない。むしろよいとさえ思えます。しかし、これが実現するかどうか、また、そういった状態が継続するかどうか、それこそ需要と供給の関係で決定する見えざる手に委ねられる世界の話です。 現在のFIT証書の取引量は980億kWhで、日本全体の販売電力量の1/8を占めていますので、供給量も当面は十分に見えます。  しかし、今後はというと、その供給量が飛躍的に増えることは期待できないと思っています。  これまでのFIT制度のもとでは、しばらくメガソーラーの建設が進み、山林を切り崩す等の開発行為が社会問題になったくらいでしたが、今や、それに適した場所を探すことは容易ではありません。  つまり、FIT証書については、どうしても今ある決まった量のパイを取り合う構図になってしまうのです。需要が高まれば、将来的に取引価格が上昇する可能性は、十分あり得る事態です。-再生可能エネルギーの総合情報サイト-
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