再生可能ノベル 柴崎町4丁目の日常-3
郁実とひなたの間に流れる気まずさをよそに、うさおは生の野菜をむしゃむしゃと食べている。
「わあ〜、こまつなもおいしいなあ〜」
ひなたがうさおを咎めた。
「うさおが来るのが遅いから、説明する時間がなかったじゃん」
「だって、このおうちのおやさい、無農薬や低農薬でおいしいんだもん」
食べながら、ぺたぺた歩いてひなたに近寄る。撫でて貰うと、気持ちよさそうに目を細めた。
「父さんがそういうのこだわってるから……」
郁実にとってはどうでもいいことだった。野菜はさほど好きではないし、仕事だけでも忙しい父親は、正しそうなことを主張して世間や政治に働きかける活動に忙しくて家にあまり帰らない。無農薬野菜も父の思う正しいことの一つだ。
ひなたがうさおを抱き上げた。うさおの頭の後ろに顔を隠す。
「ヤア、ボク、マンプクウサオダヨ。オイシイオヤサイト、バインミーガダイスキサ。オトモダチのヒナタチャンハ、トッテモイイコナンダヨ」
「ぼく、そんなこといわないもん」
うさおがピョンッとひなたの腕から飛び降りた。愛嬌のあるやりとりに、つい郁実の警戒が緩む。
「やっぱり悪い子なんじゃん」
「違うもん!」
ぷうと頬を膨らませたひなたが郁実を睨むも、子供のようで迫力がない。
「やっと郁実君に会えたのに……」
ひなたがしょんぼりと肩を落とす。
郁実はひなたのことを全く知らない。顔も体格も貧相で女子に好かれる要素がまるでないと自認する郁実に好意を持つ女子などいるはずがないので、何かの詐欺だという可能性は高まったが、ひなたが本当に悲しそうにも見えて、罪悪感が芽生えてきた。
(記:o-qoo)
https://eneleaks.com/?p=26882https://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/images/f_auto,q_auto/v1522724343/lnv03_2_usao1_sgzeig/lnv03_2_usao1_sgzeig.png?_i=AAhttps://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/images/f_auto,q_auto/v1522724343/lnv03_2_usao1_sgzeig/lnv03_2_usao1_sgzeig.png?_i=AA連載ecology 郁実とひなたの間に流れる気まずさをよそに、うさおは生の野菜をむしゃむしゃと食べている。 「わあ〜、こまつなもおいしいなあ〜」 ひなたがうさおを咎めた。 「うさおが来るのが遅いから、説明する時間がなかったじゃん」 「だって、このおうちのおやさい、無農薬や低農薬でおいしいんだもん」 食べながら、ぺたぺた歩いてひなたに近寄る。撫でて貰うと、気持ちよさそうに目を細めた。 「父さんがそういうのこだわってるから……」 郁実にとってはどうでもいいことだった。野菜はさほど好きではないし、仕事だけでも忙しい父親は、正しそうなことを主張して世間や政治に働きかける活動に忙しくて家にあまり帰らない。無農薬野菜も父の思う正しいことの一つだ。 ひなたがうさおを抱き上げた。うさおの頭の後ろに顔を隠す。 「ヤア、ボク、マンプクウサオダヨ。オイシイオヤサイト、バインミーガダイスキサ。オトモダチのヒナタチャンハ、トッテモイイコナンダヨ」 「ぼく、そんなこといわないもん」 うさおがピョンッとひなたの腕から飛び降りた。愛嬌のあるやりとりに、つい郁実の警戒が緩む。 「やっぱり悪い子なんじゃん」 「違うもん!」 ぷうと頬を膨らませたひなたが郁実を睨むも、子供のようで迫力がない。 「やっと郁実君に会えたのに……」 ひなたがしょんぼりと肩を落とす。 郁実はひなたのことを全く知らない。顔も体格も貧相で女子に好かれる要素がまるでないと自認する郁実に好意を持つ女子などいるはずがないので、何かの詐欺だという可能性は高まったが、ひなたが本当に悲しそうにも見えて、罪悪感が芽生えてきた。 (記:o-qoo) altenergy suzuki@seven.ne.jpAdministratorEneLeaks(エネリークス)
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