前回、蓄電池には「定格容量」と「実効容量」の他に「実質容量」が存在するというお話をさせていただきました。

今回は、それに加えて「サイクル数」という概念を加えてみて、一定サイクル数後にいったいどれぐらいの電力量(kWh)を

取り出すことが出来るのか?ということをお話したく思います。

そして、再生可能エネルギーでいうところの発電コストにあたる蓄電池システムの充放電コストまで掘り下げてみようと思います。

 

発電コストとは、再生可能エネルギー設備を導入した場合に、1kWhの電力を作り出すために必要な金額という意味です。

 

例えば4kWの太陽光発電システムを考えてみます。

想定発電量を4,400kWh/年間、20年間発電(30年保証というパネルもありますが)、

導入にかかる費用を1,000,000円(250,000円/kW)、年間発電量逓減率を0.5%とします。

cost

 

試算するとこんな感じです。

 

東京電力の従量電灯Bにおける、3段料金が現在30.02円/kWhですので、作った方が断然オトクということは明確だと思います

(しかし、ちょっと見ない間にだいぶ高くなったのですね…)。

 

同様に蓄電池の場合も考えてみよう、というのが今回のテーマです。

 

まず蓄電池の場合、何回使えるか?ということが最初に思い当たると思います。

これを蓄電池の世界では「サイクル数」とか「サイクル寿命」というように呼びます。

 

蓄電池に限った話ではありませんが、何をもって「寿命」と考えるのかは、人それぞれです。

本来の容量保持率が100%だとした場合、50%しかためられなくなった時に「寿命」と呼ぶ人もいれば、

全く入らない状態=0%の時を寿命と呼ぶ人もいます。

ですので、ここでは「サイクル数」という呼び方のほうが適切であると考えます。

 

そしてこの「サイクル数」は、どれぐらいの放電深度(DoD)や部分充電状態(PSoC)で運用するかによって、大きく変わってきます。

 

まず、オレンジの折れ線グラフがフル充電状態による運転イメージです。

100%のフル充電状態からスタートして、60%になるまで放電します。放電深度は40%です。

鉛蓄電池は、定期的にフル充電状態にしてあげる必要があります。

 

次に黄色の折れ線グラフですが、リチウムイオンやAHIで可能な運転イメージです。

通常の鉛蓄電池ではこのような部分充電状態(70%→50%→70%)での運用は出来ません。

正確に言うと、出来るけど劣化を促進させるというわけです。放電深度は20%です。

 

そして、青の折れ線グラフを見てみますと、空の状態からスタートし、50%まで充電して0%まで放電する。

放電深度としては50%ですが、部分充電状態としては50%→0%です。

通常の鉛蓄電池やリチウムイオン蓄電池はこのような使い方は出来ません。

100%→60%という使い方と、40%→0%という使い方では、同じ放電深度40%であっても、後者の方が蓄電池を激しく劣化させる使い方なのです。

AHIの場合は、いずれの部分充電状態による使い方であっても、影響をほとんど受けない蓄電池なのです。

AHIの場合、DoD10%で運用した場合は20,000サイクル使用したとしても90%以上の容量を保持できるという結果が出ています。

 

20,000サイクルって…1日1サイクルで考えると365日で割ったとしても約55年ですね。

55年使ってもほとんど劣化していない、ってものすごいタフな蓄電池であることがわかります。

 

でも現実的に放電深度10%での使い続けるってあまり想定できません。

我々が開発した過積載システムパッケージであっても、平均すると60%ぐらいで使うこともあります。

ですので、放電深度60%の場合で見てみることにします。

https://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/images/f_auto,q_auto/v1488349088/jyuuhouden_hqjppm/jyuuhouden_hqjppm.png?_i=AAhttps://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/images/f_auto,q_auto/v1488349088/jyuuhouden_hqjppm/jyuuhouden_hqjppm.png?_i=AAaltenergy蓄電offgridhouse前回、蓄電池には「定格容量」と「実効容量」の他に「実質容量」が存在するというお話をさせていただきました。 今回は、それに加えて「サイクル数」という概念を加えてみて、一定サイクル数後にいったいどれぐらいの電力量(kWh)を 取り出すことが出来るのか?ということをお話したく思います。 そして、再生可能エネルギーでいうところの「発電コスト」にあたる蓄電池システムの「充放電コスト」まで掘り下げてみようと思います。   発電コストとは、再生可能エネルギー設備を導入した場合に、1kWhの電力を作り出すために必要な金額という意味です。   例えば4kWの太陽光発電システムを考えてみます。 想定発電量を4,400kWh/年間、20年間発電(30年保証というパネルもありますが)、 導入にかかる費用を1,000,000円(250,000円/kW)、年間発電量逓減率を0.5%とします。   試算するとこんな感じです。   東京電力の従量電灯Bにおける、3段料金が現在30.02円/kWhですので、作った方が断然オトクということは明確だと思います (しかし、ちょっと見ない間にだいぶ高くなったのですね…)。   同様に蓄電池の場合も考えてみよう、というのが今回のテーマです。   まず蓄電池の場合、何回使えるか?ということが最初に思い当たると思います。 これを蓄電池の世界では「サイクル数」とか「サイクル寿命」というように呼びます。   蓄電池に限った話ではありませんが、何をもって「寿命」と考えるのかは、人それぞれです。 本来の容量保持率が100%だとした場合、50%しかためられなくなった時に「寿命」と呼ぶ人もいれば、 全く入らない状態=0%の時を寿命と呼ぶ人もいます。 ですので、ここでは「サイクル数」という呼び方のほうが適切であると考えます。   そしてこの「サイクル数」は、どれぐらいの放電深度(DoD)や部分充電状態(PSoC)で運用するかによって、大きく変わってきます。   まず、オレンジの折れ線グラフがフル充電状態による運転イメージです。 100%のフル充電状態からスタートして、60%になるまで放電します。放電深度は40%です。 鉛蓄電池は、定期的にフル充電状態にしてあげる必要があります。   次に黄色の折れ線グラフですが、リチウムイオンやAHIで可能な運転イメージです。 通常の鉛蓄電池ではこのような部分充電状態(70%→50%→70%)での運用は出来ません。 正確に言うと、出来るけど劣化を促進させるというわけです。放電深度は20%です。   そして、青の折れ線グラフを見てみますと、空の状態からスタートし、50%まで充電して0%まで放電する。 放電深度としては50%ですが、部分充電状態としては50%→0%です。 通常の鉛蓄電池やリチウムイオン蓄電池はこのような使い方は出来ません。 100%→60%という使い方と、40%→0%という使い方では、同じ放電深度40%であっても、後者の方が蓄電池を激しく劣化させる使い方なのです。 AHIの場合は、いずれの部分充電状態による使い方であっても、影響をほとんど受けない蓄電池なのです。 AHIの場合、DoD10%で運用した場合は20,000サイクル使用したとしても90%以上の容量を保持できるという結果が出ています。   20,000サイクルって…1日1サイクルで考えると365日で割ったとしても約55年ですね。 55年使ってもほとんど劣化していない、ってものすごいタフな蓄電池であることがわかります。   でも現実的に放電深度10%での使い続けるってあまり想定できません。 我々が開発した過積載システムパッケージであっても、平均すると60%ぐらいで使うこともあります。 ですので、放電深度60%の場合で見てみることにします。-再生可能エネルギーの総合情報サイト-