再生可能ノベル 柴崎町4丁目の日常-1
Eneleaks連載 新シリーズ
「再生可能エネルギーが気になるノベル」
今までにEneleaksに掲載してきた再生可能エネルギーの話を、ライトノベルでお届けします。
長袖を着る季節だというのに、制服のワイシャツ越しでも日差しが腕を焼く。薄い皮膚から蒸発するように、柴崎郁実の全てを奪われる気がする。気象が異常だとよく聞くが、異常ではない年があるのだろうか。
足早に後にした学校の校庭では、運動部の生徒がこの日差しの下で汗をかいていたが、郁実には理解の及ばない世界だ。美術部や吹奏楽部など冷房の効いた部屋で活動できる部活動もあるが、それなら家に帰って涼みたい。親しいと思える友達もいないし、部活動など始めたところで他人行儀な態度でゆるやかに無視をされて、教室にいるときの疎外感が放課後も続くだけだろう。
パソコンを触るのは好きで、漫画やアニメも嫌いではないが、ゲームやアニメの話題で男女混ざって賑やかなパソコン部はその輪に入れなければ居心地が悪いだろうし、女子ばかりで少ない男子が気をつかいそうな漫画研究部にも入る気がしない。
自宅である賃貸アパートが見えてきた。屋根の太陽光パネルが、住民である郁実とは対称的に強い日差しを受けて輝いている。さぞかしよく発電していることだろう。
この小綺麗なメゾネットタイプのアパートの所有者は父親で、郁実は角の部屋に親子二人で住んでいる。太陽光での発電中くらいエアコンを付けっぱなしにしてくれてもいいのに、きっと家の中は生温い。夏ではないので暑いというほどでもないのが幸いだ。
しかし今日は楽しみが待っている。ネットで注文した物が届く日だ。宅配便の到着時間の指定を今から三十分後からの時間帯にしてある。
だが、玄関の前にはすでに小さな段ボール箱が置かれていた。時間通り来てくれないことも、不在票ではなく荷物を置いていくことも、宅配としては非常識に感じる。誰かに盗まれたらどう責任をとるつもりなのだろうか。
郁実は不信感を抱きながら、荷物の箱を持ち上げた。段ボール箱は無地で、伝票にも送り先と精密機器だという情報しかない。一般的な送料を取っているのに、得体の知れない運送業者を使ってコストを削減したのだろうか。初めて使うネットショップだったが、郁実の印象は悪くなった。
二階にある自分の部屋に上がり、エアコンをつけて制服を着替えてから、段ボール箱を開封する。スマートホンを傍らに置いて、写真を撮りながらだ。品物が壊れていたときに、開封時から異常だった証拠になるのではないかとこともある。
しかし中から出てきたのは、緩衝材に包まれた「OrganicBerry Pi」と書かれた淡い青紫色の箱だった。
愕然とした。偽物だ。
https://eneleaks.com/?p=26682https://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/images/f_auto,q_auto/v1521766559/lnv01_1_taiyou-1_cklbgq/lnv01_1_taiyou-1_cklbgq.jpg?_i=AAhttps://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/images/f_auto,q_auto/v1521766559/lnv01_1_taiyou-1_cklbgq/lnv01_1_taiyou-1_cklbgq.jpg?_i=AA連載ecology Eneleaks連載 新シリーズ 「再生可能エネルギーが気になるノベル」 今までにEneleaksに掲載してきた再生可能エネルギーの話を、ライトノベルでお届けします。 長袖を着る季節だというのに、制服のワイシャツ越しでも日差しが腕を焼く。薄い皮膚から蒸発するように、柴崎郁実の全てを奪われる気がする。気象が異常だとよく聞くが、異常ではない年があるのだろうか。 足早に後にした学校の校庭では、運動部の生徒がこの日差しの下で汗をかいていたが、郁実には理解の及ばない世界だ。美術部や吹奏楽部など冷房の効いた部屋で活動できる部活動もあるが、それなら家に帰って涼みたい。親しいと思える友達もいないし、部活動など始めたところで他人行儀な態度でゆるやかに無視をされて、教室にいるときの疎外感が放課後も続くだけだろう。 パソコンを触るのは好きで、漫画やアニメも嫌いではないが、ゲームやアニメの話題で男女混ざって賑やかなパソコン部はその輪に入れなければ居心地が悪いだろうし、女子ばかりで少ない男子が気をつかいそうな漫画研究部にも入る気がしない。 自宅である賃貸アパートが見えてきた。屋根の太陽光パネルが、住民である郁実とは対称的に強い日差しを受けて輝いている。さぞかしよく発電していることだろう。 この小綺麗なメゾネットタイプのアパートの所有者は父親で、郁実は角の部屋に親子二人で住んでいる。太陽光での発電中くらいエアコンを付けっぱなしにしてくれてもいいのに、きっと家の中は生温い。夏ではないので暑いというほどでもないのが幸いだ。 しかし今日は楽しみが待っている。ネットで注文した物が届く日だ。宅配便の到着時間の指定を今から三十分後からの時間帯にしてある。 だが、玄関の前にはすでに小さな段ボール箱が置かれていた。時間通り来てくれないことも、不在票ではなく荷物を置いていくことも、宅配としては非常識に感じる。誰かに盗まれたらどう責任をとるつもりなのだろうか。 郁実は不信感を抱きながら、荷物の箱を持ち上げた。段ボール箱は無地で、伝票にも送り先と精密機器だという情報しかない。一般的な送料を取っているのに、得体の知れない運送業者を使ってコストを削減したのだろうか。初めて使うネットショップだったが、郁実の印象は悪くなった。 二階にある自分の部屋に上がり、エアコンをつけて制服を着替えてから、段ボール箱を開封する。スマートホンを傍らに置いて、写真を撮りながらだ。品物が壊れていたときに、開封時から異常だった証拠になるのではないかとこともある。 しかし中から出てきたのは、緩衝材に包まれた「OrganicBerry Pi」と書かれた淡い青紫色の箱だった。 愕然とした。偽物だ。 altenergy suzuki@seven.ne.jpAdministratorEneLeaks(エネリークス)