(「①買取費用」-「②回避可能費用等」+「費用負担調整機関事務費」)÷「③販売電力量」

 前回の記事(2019年賦課金はなぜそれほど上がらなかったのか~前編~)で、再エネ賦課金が前年度から5銭しか上がらなかった原因は「②回避可能費用等」に原因がありそうだということが分かりました。
そしてこの「等」という記述には、

  • 燃料価格に連動する回避可能費用単価の上昇
  • 2017年度(H29年度)までに導入が見込みを下回ったことに伴う剰余金の活用

が含まれていることをご紹介しました。今回は実際にこの2点について掘り下げていきます。


燃料価格に連動する回避可能費用単価の上昇

 もともと「回避可能費用」とは、電力会社が再エネを買い取り、火力発電などいつもの調達手段を使わずに済んだことで、回避できた出費のことを意味します。
実質、電力会社にとっての再エネの調達コストは、回避可能費用とイコールになります。

 そして、回避可能費用単価の決め方については平成28年の電力自由化に合わせて制度改正があり、市場価格連動制となりました。仮に原発の稼働がなく火力発電依存の高い現在のような状態で、燃料価格が上がり市場単価が上がれば、回避可能費用単価もそれに連動します。つまり、電力会社の負担が増えるということです。
(※注:現在は一部で「激変緩和措置」が取られていて、まだ100%市場価格連動制にはなっていない)

 例えば昨年はいろいろな条件が重なり、電力スポット価格が一時100円/kWhを超えるという異常な事態が発生しました。発電燃料の高止まりもその一因であったと指摘されています。
ここは為替相場を含め読みの世界ですが、今年度は燃料価格の上昇を見込んだということでしょう。 


2017年度(H29年度)までに導入が見込みを下回ったことに伴う剰余金の活用

 剰余金の存在についてこれまで考えたことはありませんでしたが、なるほどと思いました。
あくまでも再エネ賦課金は、その年の太陽光だけでなく風力や地熱など再エネの導入量を「予測」して設定するため、実績値とでは必ず差異が出ます。
買取総額を下回ってはよくないでしょうから、若干多めに見積もったとしても不思議ではありません。また、導入が想定を超えてしまうような場合、その剰余金でカバーできる余裕ももてます。
直接、資源エネルギー庁に尋ねてみたところ、上記のような剰余金の考え方自体は間違っていないことを確認できました。

 では、一体それがいくらなのか。さきほどの燃料価格に連動する回避可能費用の上昇と、剰余金をどれくらい見込んでいるのか、その内訳について続けて質問してみました。
得られた回答は
「内訳に関する資料はなく、今後公表する予定もない。賦課金算定の経緯については、調達価格等算定委員会の議事録をみてほしい」というものでした。

 調達価格等算定委員会の資料もざっと目を通しましたが、めぼしい記述はありません。資源エネルギー庁を敵に回すつもりは毛頭ないものの…、正直、不親切な対応です。

 そこで再エネ賦課金の費用負担調整機関である「低炭素投資促進機構」に目を付けました。
低炭素投資促進機構とは、需要家から(電力会社経由で)再エネ賦課金を集め、電力会社へ、再エネの買取費用から回避可能費用を差し引いた額の交付金を分配する機関です。
今回は2017年度(平成29年度)までの剰余金を充てるということで、当機関が公表している同年度の収支決算書を確認しました。

https://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/images/f_auto,q_auto/v1557284990/f442d1e24f5d04ffa5d436a110e1056d_s_o5gsz6/f442d1e24f5d04ffa5d436a110e1056d_s_o5gsz6.jpg?_i=AAhttps://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/images/f_auto,q_auto/v1557284990/f442d1e24f5d04ffa5d436a110e1056d_s_o5gsz6/f442d1e24f5d04ffa5d436a110e1056d_s_o5gsz6.jpg?_i=AAaltenergy個人法人自家消費(「①買取費用」-「②回避可能費用等」+「費用負担調整機関事務費」)÷「③販売電力量」 前回の記事(2019年賦課金はなぜそれほど上がらなかったのか~前編~)で、再エネ賦課金が前年度から5銭しか上がらなかった原因は「②回避可能費用等」に原因がありそうだということが分かりました。 そしてこの「等」という記述には、 燃料価格に連動する回避可能費用単価の上昇2017年度(H29年度)までに導入が見込みを下回ったことに伴う剰余金の活用 が含まれていることをご紹介しました。今回は実際にこの2点について掘り下げていきます。 燃料価格に連動する回避可能費用単価の上昇 もともと「回避可能費用」とは、電力会社が再エネを買い取り、火力発電などいつもの調達手段を使わずに済んだことで、回避できた出費のことを意味します。実質、電力会社にとっての再エネの調達コストは、回避可能費用とイコールになります。 そして、回避可能費用単価の決め方については平成28年の電力自由化に合わせて制度改正があり、市場価格連動制となりました。仮に原発の稼働がなく火力発電依存の高い現在のような状態で、燃料価格が上がり市場単価が上がれば、回避可能費用単価もそれに連動します。つまり、電力会社の負担が増えるということです。(※注:現在は一部で「激変緩和措置」が取られていて、まだ100%市場価格連動制にはなっていない) 例えば昨年はいろいろな条件が重なり、電力スポット価格が一時100円/kWhを超えるという異常な事態が発生しました。発電燃料の高止まりもその一因であったと指摘されています。ここは為替相場を含め読みの世界ですが、今年度は燃料価格の上昇を見込んだということでしょう。  2017年度(H29年度)までに導入が見込みを下回ったことに伴う剰余金の活用 剰余金の存在についてこれまで考えたことはありませんでしたが、なるほどと思いました。あくまでも再エネ賦課金は、その年の太陽光だけでなく風力や地熱など再エネの導入量を「予測」して設定するため、実績値とでは必ず差異が出ます。買取総額を下回ってはよくないでしょうから、若干多めに見積もったとしても不思議ではありません。また、導入が想定を超えてしまうような場合、その剰余金でカバーできる余裕ももてます。直接、資源エネルギー庁に尋ねてみたところ、上記のような剰余金の考え方自体は間違っていないことを確認できました。 では、一体それがいくらなのか。さきほどの燃料価格に連動する回避可能費用の上昇と、剰余金をどれくらい見込んでいるのか、その内訳について続けて質問してみました。得られた回答は「内訳に関する資料はなく、今後公表する予定もない。賦課金算定の経緯については、調達価格等算定委員会の議事録をみてほしい」というものでした。 調達価格等算定委員会の資料もざっと目を通しましたが、めぼしい記述はありません。資源エネルギー庁を敵に回すつもりは毛頭ないものの…、正直、不親切な対応です。  そこで再エネ賦課金の費用負担調整機関である「低炭素投資促進機構」に目を付けました。低炭素投資促進機構とは、需要家から(電力会社経由で)再エネ賦課金を集め、電力会社へ、再エネの買取費用から回避可能費用を差し引いた額の交付金を分配する機関です。今回は2017年度(平成29年度)までの剰余金を充てるということで、当機関が公表している同年度の収支決算書を確認しました。-再生可能エネルギーの総合情報サイト-