郁実は外の空気がどんよりと黒ずんでいるのを見た。空が黒いのではなく、煤けたようなもやで、空気の色が変わっている。
 ベランダの女が、黒いもやを指さして、次に郁実の部屋を見てOrganicBerry Piをさす。
「うさお、それを使って!」
 ガラス越しにも焦っているのがわかる声だった。白いうさぎはうさおという名前で、不審者と不審うさぎは知り合いらしい。
 通気口から黒いもやが部屋にまで侵入し始めた。
「うんうん。きれいにしないとね」
 うさぎが郁実のOrganicBerry Piを手に取った。息苦しさに、郁実には勝手なことをするなと大きな声を出すことができない。
 OrganicBerry Piの懐中電灯に似たLEDを黒いもやに向けるが、電源のないパソコンでLEDが光るはずがなかった。
「あれぇ、電気がないぞ」
「早く! ここを開けて!」
 ひなたがガタガタと窓を揺らす。
 郁実はOrganicBerry Piに同封されていたACアダプタを壁のコンセントに挿し、逆側をOrganicBerry Piに挿す。正体不明のパソコンが起動した。
 そしてうさおの手の中で、青い光線を発した。
「ビームだー!」
 うさおは玩具で遊ぶように楽しそうだ。
 黒いもやが光線が触れたところから薄くなっていく。徐々に空気が元の色に戻った。
「おお〜、きれいになったぞ」
「よかった……」
 明るくなった日差しに、郁実は不法侵入うさぎであるうさおと目を合わせて喜んでしまった。ぴょこぴょことうさおが跳ねる。青空が嬉しいと思ったのなんて、いつぶりだろうか。
 だが数秒後、再び地上からもやが立ち上る。先ほどよりも大きな体積で、近隣の空気を変えていく。
「なんでだよ、消えたのに……」
 また息苦しくなってきた。
「あれぇ? おかしいなあ」
「うさお、待って。その電気じゃだめ!」
 再びOrganicBerry Piを光らせようとしたうさぎを、ベランダのひなたが不可解なことを言って止める。
「だから、ここを開けてって言ってるでしょ!」
 ひなたは侵入できずに盗人猛々しく怒っているわけではなく、この黒いもやについて知っているのに話を聞いてくれないことを怒っているのだと、さすがの郁実にも理解できた。
 ハッハッと息を切らした犬のような呼吸をしながら、郁実はベランダの窓をようやく開けた。
 ひなたが部屋に滑り込み、OrganicBerry PiのACアダプターをコンセントから引き抜いた。

 

 

(記:o-qoo)

 

 

再生可能ノベル 柴崎町4丁目の日常-1

【意外な盲点】太陽光発電は、購入先によって価格も対応も違う?

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