新たに日本に輸入する蓄電池の技術研修が目的で、一週間に渡ってアメリカを訪れることになった。
世界各国から我々のようなディストリビューターが訪れていたが、
アメリカでも注目を集めているこの蓄電池の研修には、アメリカ国内からの参加も多かった。

旅の目的は、もちろん技術研修にあるのだが、
もうひとつアメリカ人に会うのなら密かに聞いて見たいことがあった。

ずばり

「トランプってどうなの?」

日本にいても様々な情報はもちろん入ってくる。
でもそこにはメディアによるバイアスが入っていると考えるのが妥当だろう。
ホントのところどうなの?アメリカ人はどう思っているの?

正直なところ再生エネルギー業界の取引先と話をする機会はそれほどは無かったのですが
それでもいくつか交わした会話の中から考察して行きたい。

テーマは、「トランプ大統領の誕生で再生エネルギーに対する政策はどう変わるのだろうか?」

 

何人かと会話して感じたのは、まだ、”not sure yet.”とか”We should wait and see.”というもの。
様子見というところでしょうか。
ガス等の”conventional”なエネルギー産業を応援するようなコメントを聞くので、時計の針を戻してしまうのではないか、と少し怖い部分もある。
しかし、広く自国産業を応援し、為替政策や通商政策等でプラスになると思われる部分も多そうだ。
察するに・・・出来たらプラスが多くなってくれるといいな、と祈るような感じではなかったでしょうか。
優秀なベンチャー企業の社員さん達だったので、少なくとも表面的には自信に溢れ、冷静な様子でした。

まだその政策は不明な点も多いとはいえ、いずれにせよアメリカのエネルギー政策は様々なところに影響を与えます。
その影響はお互いに影響し合っている部分もあるので、正確に予測するのは非常に、
勝手ながら非常に難しいと思いますが、ちょっとだけ想像してみたいと思います。

 

  • 従来型のエネルギー産業への応援は惜しまないと思います。

 

シェールオイル・ガスの生産量が増大したことにより、既に世界最大のエネルギー生産国となっています。
素直にこの優位性を利用しないことはないでしょう。

中東政策も不明ですが、こうした力を背景として、中東での米軍の規模を縮小することもあるかもしれません。
アメリカで生産量が拡大すれば、中東やロシアの油の需給が緩むことにつながり、相場は低迷するでしょう。
再生エネルギーにはマイナスですが、資源価格の低下は、他の産業の景気を押し上げ、全体としては好景気に沸くことになるかもしれません。

 

②パリ議定書等の国際的なCO2削減への取り組みについてはあまり縛られないのではないでしょうか。

エネルギー産出国として優位な立場にいる以上、残念ですが、
再生エネルギーについては必要以上には肩入れしない可能性が高いのでは、と(残念ながら)感じます。
欧州が風力や太陽光の導入で先行していることへのnegativeな感情、また、そうしたことでエネルギーコストが上がっている状況を見て、
それを単純にフォローするとは思えません。CO2が〜とか、環境が〜とかいった(中長期では真剣に捉えなければならないですが)
耳障りの良い言葉に左右されづらいような気がします。
最近良く聞く、Political Correctnessのような、多くの人がこうするべき、と考えているようなことをことさら拒否するような感覚もあるのではないでしょうか。

 

③とはいえ、環境産業分野においても米国企業が勝てる!となれば政策的にサポートを強める可能性もあります

欧州や、中国、日本といった企業が優位性を見せる業界については、ことさら相手の土俵に上がることはないでしょう。
その代わり、米国企業が優位性を持ち、“商売になる”分野については、その芽をつむようなこともしないでしょう。
VPPなどの制御システムや、様々な企業・大学等で研究を重ねている蓄電池等については、米国企業がブレークスルーを果たす可能性は十二分にあります
(もう密かに重要な技術は生まれているかもしれません)。
こうしたキーデバイスを生んだり、そういう商品を利用したビジネスモデルを出来たりした場合には、再生エネルギーの利用を増やす方向に大きく舵をきる可能性はあると思います。

 

④大きくビジネス環境が変わるかもしれません。

日本を含めた同盟国に、軍の駐留費用の負担増を受けないなら撤退する等過激な発言をするのと同時に、
中国に対しては妥協的な姿勢を見せず断固たる対応を予想させるコメントをしており、どちらにバランスが傾くのか予断を許しません。
しかしながら、米軍を撤退させて内向きなアメリカになったとしても、中国のワガママを許さない強いアメリカになったとしても、辿る道は違いますが、
やはり紛争の芽は多く、タイミングはさておき、どこかで紛争は起こると予想します。なぜなら仮にアメリカが引いてもその分中国が進出するのは目に見えているからです。
局地的ないざこざでは世界経済に大きな影響はないでしょうが、拡大した場合には原油が高騰する可能性もあると思います。
もちろん嬉しくない未来像ではありますが、原油高騰をもって再生エネルギーが大きく脚光をあびる可能性もあります。

 

⑤法人減税や補助拡大等のインフレ政策により、こうインフレ時代になる可能性もあります

現在は、低インフレ時代が終わり、高インフレ時代の正に始まりである、まるで1965年頃のようだと言う方がいます。
何事も下げたものは上がりますから、説得力もありますし、トランプさんは実際インフレ政策をとりそうです。
多くの人がインフレが予想することになれば、安いうちに資産を買いたいと思うでしょう。
再生エネルギーに投資し、自家発電で家庭や事業に必要な電力の多くが賄えれば、将来に渡ってエネルギー価格の高騰に悩まされる必要なありません。
太陽光のような再生エネルギーの導入が大きく進むのではないでしょうか。

 

このように想像してみましたが、いかがでしょうか。時間軸の長さによっても見方は変わると思いますし、
柔軟に考えて、素早く対応することが事業の発展に重要になるのではないでしょうか。

 

トランプさんの就任式まで3日程度を残すこととなりました。
いよいよですね。

 

 

 

(記:齋藤康弘)

https://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/images/f_auto,q_auto/v1484639601/a4bed7078a594cf397884cf4f64981fe_m_drrasy/a4bed7078a594cf397884cf4f64981fe_m_drrasy.jpg?_i=AAhttps://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/images/f_auto,q_auto/v1484639601/a4bed7078a594cf397884cf4f64981fe_m_drrasy/a4bed7078a594cf397884cf4f64981fe_m_drrasy.jpg?_i=AAaltenergy蓄電池総研ecology新たに日本に輸入する蓄電池の技術研修が目的で、一週間に渡ってアメリカを訪れることになった。 世界各国から我々のようなディストリビューターが訪れていたが、 アメリカでも注目を集めているこの蓄電池の研修には、アメリカ国内からの参加も多かった。 旅の目的は、もちろん技術研修にあるのだが、 もうひとつアメリカ人に会うのなら密かに聞いて見たいことがあった。 ずばり 「トランプってどうなの?」 日本にいても様々な情報はもちろん入ってくる。 でもそこにはメディアによるバイアスが入っていると考えるのが妥当だろう。 ホントのところどうなの?アメリカ人はどう思っているの? 正直なところ再生エネルギー業界の取引先と話をする機会はそれほどは無かったのですが それでもいくつか交わした会話の中から考察して行きたい。 テーマは、「トランプ大統領の誕生で再生エネルギーに対する政策はどう変わるのだろうか?」   何人かと会話して感じたのは、まだ、”not sure yet.”とか”We should wait and see.”というもの。 様子見というところでしょうか。 ガス等の”conventional”なエネルギー産業を応援するようなコメントを聞くので、時計の針を戻してしまうのではないか、と少し怖い部分もある。 しかし、広く自国産業を応援し、為替政策や通商政策等でプラスになると思われる部分も多そうだ。 察するに・・・出来たらプラスが多くなってくれるといいな、と祈るような感じではなかったでしょうか。 優秀なベンチャー企業の社員さん達だったので、少なくとも表面的には自信に溢れ、冷静な様子でした。 まだその政策は不明な点も多いとはいえ、いずれにせよアメリカのエネルギー政策は様々なところに影響を与えます。 その影響はお互いに影響し合っている部分もあるので、正確に予測するのは非常に、 勝手ながら非常に難しいと思いますが、ちょっとだけ想像してみたいと思います。   従来型のエネルギー産業への応援は惜しまないと思います。   シェールオイル・ガスの生産量が増大したことにより、既に世界最大のエネルギー生産国となっています。 素直にこの優位性を利用しないことはないでしょう。 中東政策も不明ですが、こうした力を背景として、中東での米軍の規模を縮小することもあるかもしれません。 アメリカで生産量が拡大すれば、中東やロシアの油の需給が緩むことにつながり、相場は低迷するでしょう。 再生エネルギーにはマイナスですが、資源価格の低下は、他の産業の景気を押し上げ、全体としては好景気に沸くことになるかもしれません。   ②パリ議定書等の国際的なCO2削減への取り組みについてはあまり縛られないのではないでしょうか。 エネルギー産出国として優位な立場にいる以上、残念ですが、 再生エネルギーについては必要以上には肩入れしない可能性が高いのでは、と(残念ながら)感じます。 欧州が風力や太陽光の導入で先行していることへのnegativeな感情、また、そうしたことでエネルギーコストが上がっている状況を見て、 それを単純にフォローするとは思えません。CO2が〜とか、環境が〜とかいった(中長期では真剣に捉えなければならないですが) 耳障りの良い言葉に左右されづらいような気がします。 最近良く聞く、Political Correctnessのような、多くの人がこうするべき、と考えているようなことをことさら拒否するような感覚もあるのではないでしょうか。   ③とはいえ、環境産業分野においても米国企業が勝てる!となれば政策的にサポートを強める可能性もあります 欧州や、中国、日本といった企業が優位性を見せる業界については、ことさら相手の土俵に上がることはないでしょう。 その代わり、米国企業が優位性を持ち、“商売になる”分野については、その芽をつむようなこともしないでしょう。 VPPなどの制御システムや、様々な企業・大学等で研究を重ねている蓄電池等については、米国企業がブレークスルーを果たす可能性は十二分にあります (もう密かに重要な技術は生まれているかもしれません)。 こうしたキーデバイスを生んだり、そういう商品を利用したビジネスモデルを出来たりした場合には、再生エネルギーの利用を増やす方向に大きく舵をきる可能性はあると思います。   ④大きくビジネス環境が変わるかもしれません。 日本を含めた同盟国に、軍の駐留費用の負担増を受けないなら撤退する等過激な発言をするのと同時に、 中国に対しては妥協的な姿勢を見せず断固たる対応を予想させるコメントをしており、どちらにバランスが傾くのか予断を許しません。 しかしながら、米軍を撤退させて内向きなアメリカになったとしても、中国のワガママを許さない強いアメリカになったとしても、辿る道は違いますが、 やはり紛争の芽は多く、タイミングはさておき、どこかで紛争は起こると予想します。なぜなら仮にアメリカが引いてもその分中国が進出するのは目に見えているからです。 局地的ないざこざでは世界経済に大きな影響はないでしょうが、拡大した場合には原油が高騰する可能性もあると思います。 もちろん嬉しくない未来像ではありますが、原油高騰をもって再生エネルギーが大きく脚光をあびる可能性もあります。   ⑤法人減税や補助拡大等のインフレ政策により、こうインフレ時代になる可能性もあります 現在は、低インフレ時代が終わり、高インフレ時代の正に始まりである、まるで1965年頃のようだと言う方がいます。 何事も下げたものは上がりますから、説得力もありますし、トランプさんは実際インフレ政策をとりそうです。 多くの人がインフレが予想することになれば、安いうちに資産を買いたいと思うでしょう。 再生エネルギーに投資し、自家発電で家庭や事業に必要な電力の多くが賄えれば、将来に渡ってエネルギー価格の高騰に悩まされる必要なありません。 太陽光のような再生エネルギーの導入が大きく進むのではないでしょうか。   このように想像してみましたが、いかがでしょうか。時間軸の長さによっても見方は変わると思いますし、 柔軟に考えて、素早く対応することが事業の発展に重要になるのではないでしょうか。   トランプさんの就任式まで3日程度を残すこととなりました。 いよいよですね。       (記:齋藤康弘)-再生可能エネルギーの総合情報サイト-