最近耳にするVPP。それが何か、正確に定義出来る人は少ないのではないでしょうか。
英語のVirtual Power Plantの略です。単純に訳すと「仮想発電所」となります。

昨年度公募された、NEDOによる”バーチャルパワープラント構築事業費補助金”においては、
A.アグリゲーター事業の実証実験とそれの構築に必要になる基盤整備(蓄電池導入)と、
B.ネガワット取引の実証とその基盤となるデマンドレスポンスシステムの構築について分けて募集されています。
http://www.iae.or.jp/2016/05/19/vpp/

大きく供給側からと需要側から見える事象に分けていますが、最終的には、両者を統合する、
”エネルギー生産とエネルギー消費を高度なマネジメント技術や蓄電システムを利用して制御し、
あたかも一つの発電所のように機能する統合的なシステム”というようなものだと言えるとおもいます。
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これが高度になれば、様々なエネルギー資源をより無駄なく利用し、適切に需要家に必要なタイミングで届けることが出来る、
または、エネルギーの発生に合わせ需要をコントロールすることも出来ることになります。
無駄なエナルギー消費やロスを減らすことになり、省エネに繋がります。
また、これを効率的に、安定的に運営する制御技術の発展は、系統への負担を減らしより機器の寿命を延ばし、
システム全体としても過大な設備を持つ必然性をなくし、設備コストやメンテナンスコストの大幅削減が出来るようになります。
ひいては、より小さい地域単位での需給調整が可能になるため、エネルギー供給の分散化が進むようになるでしょう。

大規模送電網や大規模発電所に頼る必要性が低下するので、災害やテロや事故に強い、より強靭な電力システムになることも予想できます。

 

現在の取り組み

こうして、省エネやCO2削減にも寄与する技術ということで、政府の大きな後押しもあり、
様々な企業・大学・研究所等で研究開発が進められていますが、使用側、供給側も参加者(機器)が多岐に渡り、
利用タイミングも不規則なことが、その構築を難しいものにしていました。
分散型エネルギー資源(DER、Distributed Energy Resources)という概念が世界で広く使われていますが、
これは、太陽光、エネファーム等のコジェネ、蓄電池、EV、ヒートポンプ、冷蔵庫等、また節電やデマンドレスポンスといった、
創エネ、蓄エネ、省エネを網羅しており、これらすべての資源のデータ収集、状況の監視、更には需給予測、
これらすべての制御が高度に統合されないと完成には至らないのです。

それが、ここに来てセンサーや通信も含めたIoT技術/システムの大きな進歩によって、
監視・制御面についてはにわかに早期の実用化が可能性が高まってきていると目されています。
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今後の課題

蓄電池の性能アップと価格の低下が、最大のハードルとして残されている状況ではないでしょうか。
NAS電池やレドックスフロー等の大型蓄電池の発展が進むのか、または家庭用リチウムイオン電池が供給の拡大とともに大きな価格下落を見せ、
広く利用可能なレベルまで下がってくるのか。はたまた、水性ナトリウムイオン電池やその他の新しい電池が、より優れた機能や、
圧倒的な低価格で市場を席巻するのか。
いずれがシェアをとるにせよ、非常に興味をそそられる競争が起こるでしょう。

VPPの実証や開発は、欧米で先行していると言われていますが、それは再生エネのシェアが大きいことや、
グリットに接続していない無電源エリアも大きいという実情を素直に反映していると思われます。
一方、日本においては、広くグリット網が張りめぐされ、電力サービスは津々浦々に届いており、
自家発電や地域でのエネルギー制御の必要性が薄かったという部分はあります。
しかしながら、前述の通り、CO2削減や省エネへの要求が高まるのに合わせ、様々な研究や検証が行われており、
その中から欧米の競業に対し、技術やビジネスモデルで先行し、広く海外でサービス展開出来るような会社が生まれることを期待しています。

 

 

(記:齋藤康弘)

https://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/images/f_auto,q_auto/v1484032155/pixta_23792837_M_kw17v2/pixta_23792837_M_kw17v2.jpg?_i=AAhttps://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/images/f_auto,q_auto/v1484032155/pixta_23792837_M_kw17v2/pixta_23792837_M_kw17v2.jpg?_i=AAaltenergy蓄電ecology最近耳にするVPP。それが何か、正確に定義出来る人は少ないのではないでしょうか。 英語のVirtual Power Plantの略です。単純に訳すと「仮想発電所」となります。 昨年度公募された、NEDOによる”バーチャルパワープラント構築事業費補助金”においては、 A.アグリゲーター事業の実証実験とそれの構築に必要になる基盤整備(蓄電池導入)と、 B.ネガワット取引の実証とその基盤となるデマンドレスポンスシステムの構築について分けて募集されています。 http://www.iae.or.jp/2016/05/19/vpp/ 大きく供給側からと需要側から見える事象に分けていますが、最終的には、両者を統合する、 ”エネルギー生産とエネルギー消費を高度なマネジメント技術や蓄電システムを利用して制御し、 あたかも一つの発電所のように機能する統合的なシステム”というようなものだと言えるとおもいます。   これが高度になれば、様々なエネルギー資源をより無駄なく利用し、適切に需要家に必要なタイミングで届けることが出来る、 または、エネルギーの発生に合わせ需要をコントロールすることも出来ることになります。 無駄なエナルギー消費やロスを減らすことになり、省エネに繋がります。 また、これを効率的に、安定的に運営する制御技術の発展は、系統への負担を減らしより機器の寿命を延ばし、 システム全体としても過大な設備を持つ必然性をなくし、設備コストやメンテナンスコストの大幅削減が出来るようになります。 ひいては、より小さい地域単位での需給調整が可能になるため、エネルギー供給の分散化が進むようになるでしょう。 大規模送電網や大規模発電所に頼る必要性が低下するので、災害やテロや事故に強い、より強靭な電力システムになることも予想できます。   現在の取り組み こうして、省エネやCO2削減にも寄与する技術ということで、政府の大きな後押しもあり、 様々な企業・大学・研究所等で研究開発が進められていますが、使用側、供給側も参加者(機器)が多岐に渡り、 利用タイミングも不規則なことが、その構築を難しいものにしていました。 分散型エネルギー資源(DER、Distributed Energy Resources)という概念が世界で広く使われていますが、 これは、太陽光、エネファーム等のコジェネ、蓄電池、EV、ヒートポンプ、冷蔵庫等、また節電やデマンドレスポンスといった、 創エネ、蓄エネ、省エネを網羅しており、これらすべての資源のデータ収集、状況の監視、更には需給予測、 これらすべての制御が高度に統合されないと完成には至らないのです。 それが、ここに来てセンサーや通信も含めたIoT技術/システムの大きな進歩によって、 監視・制御面についてはにわかに早期の実用化が可能性が高まってきていると目されています。 今後の課題 蓄電池の性能アップと価格の低下が、最大のハードルとして残されている状況ではないでしょうか。 NAS電池やレドックスフロー等の大型蓄電池の発展が進むのか、または家庭用リチウムイオン電池が供給の拡大とともに大きな価格下落を見せ、 広く利用可能なレベルまで下がってくるのか。はたまた、水性ナトリウムイオン電池やその他の新しい電池が、より優れた機能や、 圧倒的な低価格で市場を席巻するのか。 いずれがシェアをとるにせよ、非常に興味をそそられる競争が起こるでしょう。 VPPの実証や開発は、欧米で先行していると言われていますが、それは再生エネのシェアが大きいことや、 グリットに接続していない無電源エリアも大きいという実情を素直に反映していると思われます。 一方、日本においては、広くグリット網が張りめぐされ、電力サービスは津々浦々に届いており、 自家発電や地域でのエネルギー制御の必要性が薄かったという部分はあります。 しかしながら、前述の通り、CO2削減や省エネへの要求が高まるのに合わせ、様々な研究や検証が行われており、 その中から欧米の競業に対し、技術やビジネスモデルで先行し、広く海外でサービス展開出来るような会社が生まれることを期待しています。     (記:齋藤康弘)-再生可能エネルギーの総合情報サイト-