太陽光発電を語る上で、避けて通れないのがこの「グリッド・パリティ」という概念です。
英語で書くとGrid「電線網」Parity「等価」という意味で、
「再生可能エネルギーによる発電コストが既存の電力コスト(電力料金等)と同等かそれより安価になる点(コスト)」を指します。

どういうことか、ちょっとイメージしにくいですよね。
一言で言うと、電気を電力会社から「買う」よりも太陽光発電などで「作る」方がお得である状態です。
gridparity

ちなみにですが、太陽光発電の先進国ドイツでは、
2011年にグリッド・パリティに到達したと言われています。
日本においても、一部の地域や条件によって、部分的にグリッド・パリティを達成していると言われています。

そしてFIT(固定価格買取制度)の本来の目的から、ある程度グリッド・パリティが実現した時点でFITは廃止されることが予想されます。
なぜなら、FITとは太陽光発電を始めとする再生可能エネルギーを普及させるための「補助金」のようなものだからです。

グリッド・パリティの達成=支援なしでも太陽光発電が普及拡大していくフェーズに入ることを意味するのです。
では、平成28年度における「電力会社から電気を買う場合の単価」と「太陽光発電システムによる単価」を比較してみましょう。
まずは「買う場合の単価」から見てみます。


上記は、我が家の電気代明細ですが、そこまで多く使っている家庭ではないため、
5,167円の請求額を使用量215kWhで割ると、24円/kWh(ケース①)です。
では、仮に2倍の430kWhを使用した場合はどうなるかお分かりですか?
単純に電気代も2倍の10,334円程度になる、と思われるかもしれませんが、
契約種別が従量電灯ですので、実は3段階の料金単価が存在します。

1段料金:19.52円/kWh(0~120kWhまで)
2段料金:26.00円/kWh(121~300kWhまで)
3段料金:30.02円/kWh(301kWh~)

上記を元に計算をします。

使用量:430kWh

基本料金:842.40円
1段料金:2,342.40円
2段料金:4,680.00円
3段料金:3,902.60円
燃料費調整:-1,831.80円
再エネ発電賦課金:967円
口座振替割引:-54.00円

請求額(仮):10,848円

単純に2倍した金額よりも500円高くなりましたね。
単価はどうでしょうか?10,848円÷430kWh=25.2円/kWh(ケース②)

要はたくさん電気を使うご家庭の方が、電力会社から電気を買う単価というのは上がります。
また、使用量が2倍になる場合は、基本料金も上げなければいけないケースが多いです。
その場合も単価が上がります。

 

では、次に太陽光発電による発電コストを考えてみます。

例えば標準的な大きさの屋根に出力245Wのパネルを15枚設置するとします。
容量としては245W×15枚=3,675W=3.68kWとなります。この枚数で発電量シミュレーションをしてみました。
設定条件は、東京練馬、パネルの設置角度を標準的な5寸(26.6°)、方位を0°(真南)です。
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1kW当たりの発電量は右下にあるように1,081.96kWh、システムとしては3,976.21kWh発電するという結果となりました。
このシステムを税込1,200,000円で導入したとします。
太陽光発電の法定耐用年数は17年ですので、17年間の発電量は

3,976.21kWh×17年間=67,596kWh
実際は年間0.5%程度発電量が低下していきますので、それを考慮すると64,892kWhとなります。

経過年数 発電量
1年目 3,976kWh
2年目 3,956kWh
3年目 3,936kWh
4年目 3,917kWh
5年目 3,897kWh
6年目 3,877kWh
7年目 3,857kWh
8年目 3,837kWh
9年目 3,817kWh
10年目 3,797kWh
11年目 3,777kWh
12年目 3,758kWh
13年目 3,738kWh
14年目 3,718kWh
15年目 3,698kWh
16年目 3,678kWh
17年目 3,658kWh
合計 64,892kWh

※発電用逓減率0.50%で算出

そして、導入費用1,200,000円をこの17年間の発電量で割ると

1,200,000kWh ÷ 64,892kWh = 18.5円/kWh(ケース③)

 

それではまとめです。

 

ケース① 電気代が5,000円/月程度のご家庭が電力会社から電気を買う場合のコストは24円/kWh

ケース② 電気代が11,000円/月程度のご家庭が電力会社から電気を買う場合のコストは25.2円/kWh

ケース③ 3.68kWの太陽光発電システムを120万円で導入した場合の発電コストは18.5円/kWh

 

この①または②のコストと③のコストが等しくなる点、または③の方が安くなる点を「グリッド・パリティ」と呼ぶわけです。

もはや、どのケースが一番単価が安くなるかは明白ですね。

 

(記:田中圭亮)

https://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/images/f_auto,q_auto/v1480559814/pixta_19952155_M_nue6wi/pixta_19952155_M_nue6wi.jpg?_i=AAhttps://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/images/f_auto,q_auto/v1480559814/pixta_19952155_M_nue6wi/pixta_19952155_M_nue6wi.jpg?_i=AAaltenergy発電costdown太陽光発電を語る上で、避けて通れないのがこの「グリッド・パリティ」という概念です。 英語で書くとGrid「電線網」Parity「等価」という意味で、 「再生可能エネルギーによる発電コストが既存の電力コスト(電力料金等)と同等かそれより安価になる点(コスト)」を指します。 どういうことか、ちょっとイメージしにくいですよね。 一言で言うと、電気を電力会社から「買う」よりも太陽光発電などで「作る」方がお得である状態です。 ちなみにですが、太陽光発電の先進国ドイツでは、 2011年にグリッド・パリティに到達したと言われています。 日本においても、一部の地域や条件によって、部分的にグリッド・パリティを達成していると言われています。 そしてFIT(固定価格買取制度)の本来の目的から、ある程度グリッド・パリティが実現した時点でFITは廃止されることが予想されます。 なぜなら、FITとは太陽光発電を始めとする再生可能エネルギーを普及させるための「補助金」のようなものだからです。 グリッド・パリティの達成=支援なしでも太陽光発電が普及拡大していくフェーズに入ることを意味するのです。 では、平成28年度における「電力会社から電気を買う場合の単価」と「太陽光発電システムによる単価」を比較してみましょう。 まずは「買う場合の単価」から見てみます。 上記は、我が家の電気代明細ですが、そこまで多く使っている家庭ではないため、 5,167円の請求額を使用量215kWhで割ると、24円/kWh(ケース①)です。 では、仮に2倍の430kWhを使用した場合はどうなるかお分かりですか? 単純に電気代も2倍の10,334円程度になる、と思われるかもしれませんが、 契約種別が従量電灯ですので、実は3段階の料金単価が存在します。 1段料金:19.52円/kWh(0~120kWhまで) 2段料金:26.00円/kWh(121~300kWhまで) 3段料金:30.02円/kWh(301kWh~) 上記を元に計算をします。 使用量:430kWh 基本料金:842.40円 1段料金:2,342.40円 2段料金:4,680.00円 3段料金:3,902.60円 燃料費調整:-1,831.80円 再エネ発電賦課金:967円 口座振替割引:-54.00円 請求額(仮):10,848円 単純に2倍した金額よりも500円高くなりましたね。 単価はどうでしょうか?10,848円÷430kWh=25.2円/kWh(ケース②) 要はたくさん電気を使うご家庭の方が、電力会社から電気を買う単価というのは上がります。 また、使用量が2倍になる場合は、基本料金も上げなければいけないケースが多いです。 その場合も単価が上がります。   では、次に太陽光発電による発電コストを考えてみます。 例えば標準的な大きさの屋根に出力245Wのパネルを15枚設置するとします。 容量としては245W×15枚=3,675W=3.68kWとなります。この枚数で発電量シミュレーションをしてみました。 設定条件は、東京練馬、パネルの設置角度を標準的な5寸(26.6°)、方位を0°(真南)です。 1kW当たりの発電量は右下にあるように1,081.96kWh、システムとしては3,976.21kWh発電するという結果となりました。 このシステムを税込1,200,000円で導入したとします。 太陽光発電の法定耐用年数は17年ですので、17年間の発電量は 3,976.21kWh×17年間=67,596kWh 実際は年間0.5%程度発電量が低下していきますので、それを考慮すると64,892kWhとなります。 経過年数 発電量 1年目 3,976kWh 2年目 3,956kWh 3年目 3,936kWh 4年目 3,917kWh 5年目 3,897kWh 6年目 3,877kWh 7年目 3,857kWh 8年目 3,837kWh 9年目 3,817kWh 10年目 3,797kWh 11年目 3,777kWh 12年目 3,758kWh 13年目 3,738kWh 14年目 3,718kWh 15年目 3,698kWh 16年目 3,678kWh 17年目 3,658kWh 合計 64,892kWh ※発電用逓減率0.50%で算出 そして、導入費用1,200,000円をこの17年間の発電量で割ると 1,200,000kWh ÷ 64,892kWh = 18.5円/kWh(ケース③)   それではまとめです。   ケース① 電気代が5,000円/月程度のご家庭が電力会社から電気を買う場合のコストは24円/kWh ケース② 電気代が11,000円/月程度のご家庭が電力会社から電気を買う場合のコストは25.2円/kWh ケース③ 3.68kWの太陽光発電システムを120万円で導入した場合の発電コストは18.5円/kWh   この①または②のコストと③のコストが等しくなる点、または③の方が安くなる点を「グリッド・パリティ」と呼ぶわけです。 もはや、どのケースが一番単価が安くなるかは明白ですね。   (記:田中圭亮)-再生可能エネルギーの総合情報サイト-