電気新聞の昨年8月14日号~9月3日号にかけて、『電力自由化キーワード』という連載が掲載されました。
そこでは電力自由化を取り巻く様々なキーワードについて解説されているのですが、中には非常に難しい内容も含まれておりますため、『噛み砕きシリーズ』と称して各記事の要点を掻い摘んでご紹介することにしました。全11本の連載記事として、毎月2本ずつアップしていく予定です。

第6弾の今回は『間接送電権』について説明していきます。


間接送電権

 2019年4月から導入された間接送電権。
一言で言えば「隣接エリア間の値差を精算する権利」なのですが、これだけだと正直全くピンときません。
そこで具体的な事例を用いて紐解いていきたく思います。

間接送電権はエリアをまたいだ取引で初めて発生する

 最初に押さえておくべきポイントは、同エリア内における取引であれば、プレーヤーである発電事業者および小売事業者は相対取引等を行うことで精算可能であるため、間接送電権が発生することはありません。
つまり間接送電権は、エリアをまたいだ取引をする場合にのみ発生します。

 次にエリアをまたいだ取引は、必ず日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場を介して取引する必要があり、そのスポット価格はエリアによって異なる場合があります。傾向としては、大規模太陽光発電システムの導入が進み、原子力発電所が再稼働している西日本においては、より多くの電力をより安く作り出すことができるため、東日本よりも年平均1~2円/kWh安く取引されているというのが実態のようです。

 では、エリア間での値差が生じると言うことはどういうことなのかということを見ていきます。

CASE 1

  • 中部エリアの発電事業者が東京エリアの小売事業者への販売を想定(契約8円/kWh)
  • スポット価格がそれぞれのエリアで同一単価(5円/kWh)である場合

 このケースの場合、売値と買値が同じであるため、小売事業者はJPEXに対して5円/kWhを支払い、JPEXは発電事業者に対して5円/kWhを支払います。そして相対契約(8円/kWh)との差分である3円/kWhは発、電事業者から小売事業者に対して直接支払われるという流れです。

次にスポット価格がエリアで異なる場合を見ていきますが、そもそもなぜエリア毎に価格差が生じてくるのでしょうか?その理由は「連系線容量」という概念が関係してきます。

 例えば、中部エリアで700kWh発電し、同エリア内の需要が500kWhであると仮定します。一方で、東京エリアでは300kWhしか発電せず、同エリア内の需要が500kWhであるとします。中部エリアから東京エリアに対して200kWhを送電することが出来れば、東京エリアの需要500kWhを満たすことが出来ます。しかしながら、その時々で送電可能な電力の上限が決まっているのです(=連系線容量)。
連系線容量が100kWhだとした場合、500kWhの需要に対して400kWhしか供給できなくなり、東京エリアのスポット価格が上昇するという仕組です

altenergy個人噛み砕きシリーズ法人連載電気新聞の昨年8月14日号~9月3日号にかけて、『電力自由化キーワード』という連載が掲載されました。 そこでは電力自由化を取り巻く様々なキーワードについて解説されているのですが、中には非常に難しい内容も含まれておりますため、『噛み砕きシリーズ』と称して各記事の要点を掻い摘んでご紹介することにしました。全11本の連載記事として、毎月2本ずつアップしていく予定です。 第6弾の今回は『間接送電権』について説明していきます。 間接送電権  2019年4月から導入された間接送電権。一言で言えば「隣接エリア間の値差を精算する権利」なのですが、これだけだと正直全くピンときません。そこで具体的な事例を用いて紐解いていきたく思います。 間接送電権はエリアをまたいだ取引で初めて発生する  最初に押さえておくべきポイントは、同エリア内における取引であれば、プレーヤーである発電事業者および小売事業者は相対取引等を行うことで精算可能であるため、間接送電権が発生することはありません。つまり間接送電権は、エリアをまたいだ取引をする場合にのみ発生します。  次にエリアをまたいだ取引は、必ず日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場を介して取引する必要があり、そのスポット価格はエリアによって異なる場合があります。傾向としては、大規模太陽光発電システムの導入が進み、原子力発電所が再稼働している西日本においては、より多くの電力をより安く作り出すことができるため、東日本よりも年平均1~2円/kWh安く取引されているというのが実態のようです。  では、エリア間での値差が生じると言うことはどういうことなのかということを見ていきます。 CASE 1 中部エリアの発電事業者が東京エリアの小売事業者への販売を想定(契約8円/kWh)スポット価格がそれぞれのエリアで同一単価(5円/kWh)である場合  このケースの場合、売値と買値が同じであるため、小売事業者はJPEXに対して5円/kWhを支払い、JPEXは発電事業者に対して5円/kWhを支払います。そして相対契約(8円/kWh)との差分である3円/kWhは発、電事業者から小売事業者に対して直接支払われるという流れです。 次にスポット価格がエリアで異なる場合を見ていきますが、そもそもなぜエリア毎に価格差が生じてくるのでしょうか?その理由は「連系線容量」という概念が関係してきます。  例えば、中部エリアで700kWh発電し、同エリア内の需要が500kWhであると仮定します。一方で、東京エリアでは300kWhしか発電せず、同エリア内の需要が500kWhであるとします。中部エリアから東京エリアに対して200kWhを送電することが出来れば、東京エリアの需要500kWhを満たすことが出来ます。しかしながら、その時々で送電可能な電力の上限が決まっているのです(=連系線容量)。連系線容量が100kWhだとした場合、500kWhの需要に対して400kWhしか供給できなくなり、東京エリアのスポット価格が上昇するという仕組です-再生可能エネルギーの総合情報サイト-