CASE 2

  • 中部エリアの発電事業者が東京エリアの小売事業者への販売を想定(契約8円/kWh)
  • スポット価格が中部エリアで7円/kWh、東京エリアで9円/kWhである時

 CASE2においては、それぞれのエリアで売値と買値が異なることから、相対契約が8円であるにも関わらず、小売事業者は9円/kWhを支払うことになり(▲1円/kWh)、発電事業者は7円/kWhしかもらえない(▲1円/kWh)ことから、2円/kWhのエリア間値差が生じていることになります。この値差を精算する権利が「間接送電権」です。
発電事業者または小売事業者のいずれかが、この取引の間接送電権を予め購入しておくことで(仮に1.1円/kWhで購入したとする)、いくらになるか分からない値差を1.1円/kWhに固定することが出来ます。

 上記事例の場合、最終的に発電事業者が受け取る金額は7.9円/kWh(▲0.1円/kWh)となり、間接送電権を購入しなかった場合(▲1円/kWh)と比較してリスクを軽減することが出来るというわけです。
注意しなくてはならないのは、エリアの価格が逆転した場合です。これは次のCASE 3で見ていきます。

CASE 3

  • 中部エリアの発電事業者が東京エリアの小売事業者への販売を想定(契約8円/kWh)
  • スポット価格が中部エリアで9円/kWh、東京エリアで7円/kWhである時

 CASE 2を期待して間接送電権を購入したにも関わらず、結果として価格が逆転(売り手の価格>買い手の価格)してしまった場合、本来発電事業者の利益となるはずであった2円/kWhの値差分を返上しなくてはいけなくなります。
 つまり、発電事業者が受け取る金額は、
電力の購入費:+9円/kWh - 間接送電権購入費:▲1.1円/kWh - 値差返上費:▲2円/kWh
で5.9円/kWhとなり、8円/kWhの契約にも関わらず▲2.1円/kWhの損失を被ることになるのです。
過去1年の実際の取引履歴を見てみると、逆転するケースもあったようです。


 また、2018年10月以前は、相対契約を結んでいる小売事業者にとっては市場を介さずに連系線の予約(期限は半永久的かつ早い者順で取引価格も安定)をすることが出来たために、電源の投資回収見込が立てやすかったというメリットがあったようです。しかしながら、他の事業者にとってはその分利用できる連系線容量が減るということがデメリットとなっていました。

 公平性を保つ目的から相対契約ではなくスポット市場を介すること、有効期限も1週間、入札制、となったわけですが、このルールをそのまま全事業者に適用してしまった場合、連系線を予約していた事業者が著しい不利益を被る可能性があることから、最長2025年前までは間接送電権を無償配布するという経過措置が取られることになりました。

 そういった意味では間接送電権の取引は限定的ではあるものの、特に「東北→北海道」、「中部→東京」のニーズが高く、取引量も単月で数百MW規模であるため、連系線容量を増強する等の眼前の課題はあるものの、一定の効果が出ていると言えるのではないかと思います。



記:田中 圭亮

altenergy個人噛み砕きシリーズ法人連載CASE 2 中部エリアの発電事業者が東京エリアの小売事業者への販売を想定(契約8円/kWh) スポット価格が中部エリアで7円/kWh、東京エリアで9円/kWhである時  CASE2においては、それぞれのエリアで売値と買値が異なることから、相対契約が8円であるにも関わらず、小売事業者は9円/kWhを支払うことになり(▲1円/kWh)、発電事業者は7円/kWhしかもらえない(▲1円/kWh)ことから、2円/kWhのエリア間値差が生じていることになります。この値差を精算する権利が「間接送電権」です。発電事業者または小売事業者のいずれかが、この取引の間接送電権を予め購入しておくことで(仮に1.1円/kWhで購入したとする)、いくらになるか分からない値差を1.1円/kWhに固定することが出来ます。  上記事例の場合、最終的に発電事業者が受け取る金額は7.9円/kWh(▲0.1円/kWh)となり、間接送電権を購入しなかった場合(▲1円/kWh)と比較してリスクを軽減することが出来るというわけです。注意しなくてはならないのは、エリアの価格が逆転した場合です。これは次のCASE 3で見ていきます。 CASE 3 中部エリアの発電事業者が東京エリアの小売事業者への販売を想定(契約8円/kWh)スポット価格が中部エリアで9円/kWh、東京エリアで7円/kWhである時  CASE 2を期待して間接送電権を購入したにも関わらず、結果として価格が逆転(売り手の価格>買い手の価格)してしまった場合、本来発電事業者の利益となるはずであった2円/kWhの値差分を返上しなくてはいけなくなります。  つまり、発電事業者が受け取る金額は、電力の購入費:+9円/kWh - 間接送電権購入費:▲1.1円/kWh - 値差返上費:▲2円/kWhで5.9円/kWhとなり、8円/kWhの契約にも関わらず▲2.1円/kWhの損失を被ることになるのです。過去1年の実際の取引履歴を見てみると、逆転するケースもあったようです。  また、2018年10月以前は、相対契約を結んでいる小売事業者にとっては市場を介さずに連系線の予約(期限は半永久的かつ早い者順で取引価格も安定)をすることが出来たために、電源の投資回収見込が立てやすかったというメリットがあったようです。しかしながら、他の事業者にとってはその分利用できる連系線容量が減るということがデメリットとなっていました。  公平性を保つ目的から相対契約ではなくスポット市場を介すること、有効期限も1週間、入札制、となったわけですが、このルールをそのまま全事業者に適用してしまった場合、連系線を予約していた事業者が著しい不利益を被る可能性があることから、最長2025年前までは間接送電権を無償配布するという経過措置が取られることになりました。  そういった意味では間接送電権の取引は限定的ではあるものの、特に「東北→北海道」、「中部→東京」のニーズが高く、取引量も単月で数百MW規模であるため、連系線容量を増強する等の眼前の課題はあるものの、一定の効果が出ていると言えるのではないかと思います。 記:田中 圭亮-再生可能エネルギーの総合情報サイト-