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「そんなに燃えないでしょ!」
 郁実が大袈裟な言い方に呆れる。
「これ、燃えるの……?」
 ひなたがバッテリーを指先でつまんで、ルレイ神父に差し出した。
「スマホのバッテリーなら、爆発して燃える事故あったじゃん。さすがに燃え尽くすほどではないと思うけど」
「そうです。きちんと管理しないと、リチウムイオンのバッテリーは危険です」
 ルレイがビシッ指を立てた。
「そして、充電しすぎも使いすぎも、劣化を早めると聞いたことがありませんか?」
「ある! 普通に使ってても充電って持たなくなるし。何なんだよ、バッテリーって」
 高いのに理不尽だと郁実は文句を言う。
 ルレイ神父はモバイルバッテリーを優しく撫で、バッテリーに語りかける。
「このような言葉を投げられることも、再生可能エネルギーの神が与えた試練です。いつか、リチウムイオンバッテリーをより効率的に、長く、安全に救えるBMSが現れて、あなたを救うでしょう」
「BMSって、そういうシステムなんだね」
 ひなたが納得した。
「難しいシステムなのです
「だから高いのか
 郁実はバッテリーをルレイ神父から取り戻し、ポケットに入れた。壊れたら高いので困る。
「それだけではありません。電気自動車の普及で、リチウムイオンの価格自体も上がっています」
思えば郁実の父親も、環境への意識から電気自動車に乗っている。
このOrganicBerry Pi、バッテリーがないと使えないようなものなのに……
 OrganicBerry Piを眺め、郁実は不満げだ。タダで手に入れたコンピューターだが、ランニングコストが高いような気がする。
 ひなたはふと思いついた。
「バッテリーって、こういう、リチウムイオンしかないの?」
「そんなことはありません。このお話は、またいつか……」
ふふふと思わせぶりに笑い、ルレイ神父は去って行った。
 ようやく辿り着いたコンビニで、郁実は冷房を堪能したひなたは暑さを感じないようだが、そういえば僧衣のルレイ神父は長袖で暑くないのだろうか。
コンビニに特に用事はないと思っていた郁実だが、ゲーム雑誌に好きな海外ゲームの記事載っていたので久しぶりに電子書籍ではなく紙の雑誌を買った。
 人通りがないので、棒アイスを並んで食べながら帰路につ。他の人にはひなたが見えないので、アイスだけが宙に浮いているように見えるのだろうか。誰かに確認したことはない。
「なーんか郁実君に私への壁を感じる」
口を尖らせる。郁実が未だに打ち解けていないことに気付かれている。
「まだ会ったばっかりだし。ひなたさんは俺のことずっと知ってたっていうけど」
学校の友達とも、友人だと認識するまでに時間を要した。相手が自分に好意を持っているとなかなか信じられない。
「はやく追いついてよ。どうしたら私のことをもっと気にしてくれるのかな」
「いや、もう、十分です……!」
ふと、自身から友達への好意について考えた。いつも表すまでに勇気がいる。
 アイスを食べきると、突然、郁実は息苦しさを感じた。冷たい物を食べたときの頭痛やお腹が冷えたときの腹痛ではない。
小さな暗闇が、路上に浮いている。
「まさか、またフォッシルズが……!」
 こんなに時間を置かずに現れたことはなかった。しかも今は夜だ。もう郁実のOrganicBerry Piは動かない。
 黒いもやが広がるのが、街灯から外れたところでもはっきり見えた。
 ひなたが郁実の手を握った。
「郁実君、離れよう」
 今はそれしかできないとあまりに悔しそうに言うので、郁実は心苦しくなった。ひなたにこんな表情をさせたくない。いつも郁実に笑顔を向けてくれるのに。
二十メートルほど離れると苦しさなくなったが、だからといって何かできるわけではない
そのとき、強い風が路地を抜けた。
「あれ、ひなたじゃない?」
 その女性の声は、頭上から聞こえた。
 
(記:o-qoo)
 
 
 
 
 
 

再生可能ノベル2 柴崎町4丁目の非日常-1

 

再生可能ノベル 柴崎町4丁目の日常-1

https://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/image/upload/v1532407835/ln2_5_rurei_marh3k.jpghttps://res.cloudinary.com/hv7dr7rdf/image/upload/c_crop,h_339,w_339,x_0,y_130/h_150,w_150/v1532407835/ln2_5_rurei_marh3k.jpgaltenergy連載ecology    「そんなに燃えないでしょ!」  郁実が大袈裟な言い方に呆れる。 「これ、燃えるの……?」  ひなたがバッテリーを指先でつまんで、ルレイ神父に差し出した。 「スマホのバッテリーなら、爆発して燃える事故あったじゃん。さすがに燃え尽くすほどではないと思うけど」 「そうです。きちんと管理しないと、リチウムイオンのバッテリーは危険です」  ルレイがビシッ指を立てた。 「そして、充電しすぎも使いすぎも、劣化を早めると聞いたことがありませんか?」 「ある! 普通に使ってても充電って持たなくなるし。何なんだよ、バッテリーって」  高いのに理不尽だと郁実は文句を言う。  ルレイ神父はモバイルバッテリーを優しく撫で、バッテリーに語りかける。 「このような言葉を投げられることも、再生可能エネルギーの神が与えた試練です。いつか、リチウムイオンバッテリーをより効率的に、長く、安全に救えるBMSが現れて、あなたを救うでしょう」 「BMSって、そういうシステムなんだね」  ひなたが納得した。 「難しいシステムなのですよ」 「だから高いのか」  郁実はバッテリーをルレイ神父から取り戻し、ポケットに入れた。壊れたら高いので困る。 「それだけではありません。電気自動車の普及で、リチウムイオンの価格自体も上がっています」 思えば郁実の父親も、環境への意識から電気自動車に乗っている。 「このOrganicBerry Pi、バッテリーがないと使えないようなものなのに……」  OrganicBerry Piを眺め、郁実は不満げだ。タダで手に入れたコンピューターだが、ランニングコストが高いような気がする。  ひなたはふと思いついた。 「バッテリーって、こういう、リチウムイオンしかないの?」 「そんなことはありません。このお話は、またいつか……」 ふふふと思わせぶりに笑い、ルレイ神父は去って行った。  ようやく辿り着いたコンビニで、郁実は冷房を堪能した。ひなたは暑さを感じないようだが、そういえば僧衣のルレイ神父は長袖で暑くないのだろうか。 コンビニに特に用事はないと思っていた郁実だが、ゲーム雑誌に好きな海外ゲームの記事が載っていたので久しぶりに電子書籍ではなく紙の雑誌を買った。  人通りがないので、棒アイスを並んで食べながら帰路につく。他の人にはひなたが見えないので、アイスだけが宙に浮いているように見えるのだろうか。誰かに確認したことはない。 「なーんか郁実君に私への壁を感じる」 口を尖らせる。郁実が未だに打ち解けていないことに気付かれている。 「まだ会ったばっかりだし。ひなたさんは俺のことずっと知ってたっていうけど」 学校の友達とも、友人だと認識するまでに時間を要した。相手が自分に好意を持っているとなかなか信じられない。 「はやく追いついてよ。どうしたら私のことをもっと気にしてくれるのかな」 「いや、もう、十分です……!」 ふと、自身から友達への好意について考えた。いつも表すまでに勇気がいる。  アイスを食べきると、突然、郁実は息苦しさを感じた。冷たい物を食べたときの頭痛やお腹が冷えたときの腹痛ではない。 小さな暗闇が、路上に浮いている。 「まさか、またフォッシルズが……!」  こんなに時間を置かずに現れたことはなかった。しかも今は夜だ。もう郁実のOrganicBerry Piは動かない。  黒いもやが広がるのが、街灯から外れたところでもはっきり見えた。  ひなたが郁実の手を握った。 「郁実君、離れよう」  今はそれしかできないとあまりに悔しそうに言うので、郁実は心苦しくなった。ひなたにこんな表情をさせたくない。いつも郁実に笑顔を向けてくれるのに。 二十メートルほど離れると息苦しさはなくなったが、だからといって何かできるわけではない。 そのとき、強い風が路地を抜けた。 「あれ、ひなたじゃない?」  その女性の声は、頭上から聞こえた。   (記:o-qoo)              -再生可能エネルギーの総合情報サイト-
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