前回は、新電力(PPS)の収益構造がどうなっているか?について、収入の部にフォーカスをしてみました。
今回は「コスト」について考えてみたく思います。

その前に、現在新電力のシェアってどうなっているの?と疑問が出てきましたので調べてみました。
左側のチャートが、一般電気事業者(電力10社)を含む、電力小売りにおけるシェアです。
PPSシェアNo.1のエネットでさえわずか2%程度と言う具合です。
右側のチャートは新電力におけるシェアです。2016年7月時点でのデータですので、前回お伝えした「日本ロジテック共同組合」はもう入っていません。

あまり聞いたことがない企業も入っていますね。

彼らのコストとしては、大きく

①電力調達コスト
②託送料金
③インバランス料金
④管理費(営業コスト含む)

の4つが挙げられます。

 

①の電力調達コストは、前回お伝えしたとおり、自社発電所を持っている場合は発電コスト、
JEPXなど市場から調達する場合はそのコストということです。そして④に関しても特に説明は不要かと思います。

問題は②と③です。

「託送料金」ってご存知でしょうか?
大手電力会社に限らず、新電力も既存の送配電網を利用して電気を供給することになります。
その利用料がこの託送料金ということになります。
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この託送料金が「高すぎる」ということで、波紋を呼んだわけです。
どれぐらい高いのか?と言いますと、例えば東京電力では8.57円/kWh(家庭用は50kW未満ですので低圧)です。
仮に電気の単価が30円/kWhだとすると28.6%と、かなりの割合を占めます。
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せっかく、調達コストが安かったとしてもこの託送料金が高いために相当苦しいわけです。
そして④のインバランス料金ですが、新電力には「30分同時同量」という義務が課せられます。
これは大手電力会社などと比較して、新電力は取り扱う電気量が少ないため、
瞬時瞬時の同時同量(需要と供給のバランス)を達成することが難しいわけです。
ですので、瞬時ではなく30分を一つの単位として、同時同量を達成しなくてはいけない、というルールです。
もし、電気量の不足が発生した場合は、電力会社が不足分を補給してくれますが、
ペナルティ料金として通常より高額な電気料金を支払う必要が生じます。
この料金をインバランス料金と言います。ではどれぐらいの誤差が許されるか?と言いますと、±3%です。

±3%以内に収まっているのであれば関係ありませんが、現実はなかなか難しいですよね。

 

 

さらに!!

 

 

極めつけが、先般発表された福島原発事故における廃炉費用と賠償の費用の一部を、
新電力も負担することになったというコストです。
経産省の案としては、この費用を託送料金に上乗せすることを想定しているようです。
それは当然、その電力会社を選択した契約者の負担と直結します。

 

再エネ賦課金、託送料金といった費用は基本的には使用した電力量に応じて課されます。
電力会社に頼らない生活=オフグリッド生活の需要が、今後高まるような気がしてなりません。
「完全なオフグリッド生活はいざという時に不安」という方も多いと思いますので、私たちとしては「ニアリーオフグリッド」を提唱しています。
来年早々の商品化を見据えてプロジェクトを進めておりますので、お楽しみに!

 

 

 

 

(記:田中圭亮)

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